『防衛学研究』公募論文投稿規定等の改正について

投稿日時: 12/18 jsds

編集委員会

 

 本防衛学会会員の皆様におかれましては、平素より機関誌『防衛学研究』への投稿及び査読へのご協力を誠にありがとうございます。とりわけ査読者の先生方におかれましては、ご多忙のなか豊富な学識に基づいた厳正かつ丁寧な査読をして頂いていることに、編集委員会一同、心より御礼を申し上げます。

 さて、このたび編集委員会及び常任理事会での審議を経て、「公募論文投稿規定」及び「編集及び執筆要領」を改正しました。このうち大きな改正となるものは、投稿論文が掲載にふさわしくないと編集委員会が判断した場合、査読に回さずして「採用不可」の判定を出し、審査を終了することです。

 機関誌へ投稿してくださることはありがたいことですが、その反面、近年では学術論文としての基本的要件を満たさないことが専門外の者から見ても明らかな原稿が散見されるようになりました。具体的には、先行研究の整理やリサーチ・クエスチョンの設定がなされていない、客観的・中立的な立場からの分析がなされていない、脚注の大半が教科書や一般啓蒙書籍で占められているなどの原稿です。これまで編集委員会としては、投稿論文の水準についての判断は控え、「編集及び執筆要領」に定める形式さえ満たしていれば、投稿論文を受理し、査読プロセスに進んでおりました。

 他方、近年では査読に応じてくださる研究者が減少する傾向にあります。その背景には、各大学において常勤の先生方が抱える業務量が増大し、査読という匿名作業にまで労力を回す余裕がなくなってきたという事情があるものと推察します。編集委員会としましても、査読依頼に対して辞退のお返事を頂戴することが多くなり、査読に応諾してくださる研究者の労力が貴重であることを痛感しております。つきましては、査読に関しては、今後は専門家の判断を伺う水準に達している原稿に絞る必要があるとの認識に至り、編集委員会の判断で審査を終了することを可能とすることにしました。

 もちろん、これに対して異論があろうことも承知しております。査読については、しばしばその教育的効果が指摘されます。すなわち、初回の査読で「掲載可」となる場合は少なく、大部分が「再査読」の判定を受け、修正後に掲載に至ることになるため、その過程において論文の水準向上が期待できるというものです。編集委員会の判断で審査を終了することにより、そうした査読の教育的効果を損なうのではないかとのご懸念もあるのではないかと存じます。しかし、編集委員会としましては、査読は掲載可否の審査であり、教育そのものではないとの立場をとっております。査読は英語ではpeer reviewといいますが、peerには「同等の人」という意味もあり、「教員と学生」といった教育現場での人間関係とは異なりますので、その点でも教育とは一線を引くべきと考えます。加えて、本誌「編集及び執筆要領」では、提出原稿は完成原稿であることを求めており、コメントを受けて修正することを前提とした投稿はもとより認めておりません。

 今後、編集委員会の判断で採用不可になりうる例として、「公募論文投稿規定」には次の場合を列挙しております。

 

(1)『防衛学研究』誌の対象範囲を逸脱したテーマ、あるいは非常に狭く特殊な読者層にフォーカスしたテーマの原稿
(2)客観性・中立性を欠き、特定の社会的立場に立脚した主張をする原稿
(3)学術論文としての基本構成(先行研究の分析、リサーチ・クエスチョンの設定など)を欠いた原稿
(4)新たな知見を提示することなく、すでに発表されている研究成果を反復・拡張しているにすぎない原稿(新たな知見が多少含まれていても、研究上の意義が乏しいと思われる場合も含む。)
(5)引用文献が教科書や一般啓蒙書籍などで構成され、学術論文としての水準に満たない原稿
(6)その他、編集委員会が不適切と判断した原稿

 

 このように具体的な例を列挙しているのは、今後投稿される方が、あらかじめ原稿を見直すことを期待するためです。特に、論文の投稿が初めての方は、自己判断だけでなく、指導教員等から助言を受けることを推奨します。「採用不可」の判定となった場合、以後、同一著者が類似論文を投稿しても受理しないことと定めております。機会を大切にしていただくため、万全の準備をしたうえで投稿されることをお勧めします。

 

 「『防衛学研究』公募原稿投稿規定」

 

 「『防衛学研究』編集及び執筆要領」