研究大会成果報告

第28回 令和4年度 研究大会の報告

投稿日時: 2023/06/01 jsds

日本防衛学会(JSDS)令和4年度 秋季研究大会の報告

 

【11月26日(土)】

 

部会1(26日 10:00~12:00、司会:岡部俊哉)

「ロシアのウクライナ侵攻が今後の軍事作戦に及ぼす影響」をテーマに、3名の報告者(髙橋一平、佐々木孝博、土持太郎)から、作戦の対称性に着目した将来戦の様相、今年改定されたロシアの海軍ドクトリンを踏まえたロシアの海上作戦の特性、およびウクライナ軍の指揮統制システムから見えてくる我が国の指揮統制システムの課題についてそれぞれ報告が行われた。討論者(廣瀬陽子、松村五郎)からは、侵攻前の状況から実際に変化した事項の具体化、侵攻前後の戦い方の違いや戦いの主体や手段等について質問があった。最後はフロアも加わり、今後の軍事作戦に及ぼす影響等について活発な議論が行われた。

 

部会2「自由論題」(26日 10:00~12:00。司会:木原淳)

まず防衛大学校の浦上法久会員の報告「アフリカにおける平和と安定への新たなアプローチ(NAPSA)」と武蔵野大学の中村宏毅准教授の討論がなされ、日本の対アフリカ安全保障イニシアティブが論考されました。次いで愛知学院大学の大澤傑会員の報告「権威主義にとっての「ハイブリッド戦争」」と東京国際大学の武田康裕の討論がなされ、権威主義体制に対するデジタル技術の功罪が論考されました。最後に防衛大学校の中澤信一会員の報告「中国海警局に所属する船舶の尖閣派遣パターンと海警法の本気度」と同志社大学の浅野亮教授の討論がなされ、中国海警法施行後の武器使用の態勢が論考されました。いずれもフロアからの積極的な質疑応答が行われ、盛況な研究部会となりました。

 

共通部会1(26日 13:00~16:00、司会兼討論:武居智久)

テーマは「ロシアのウクライナ侵攻(ミリタリーの視点から)」である。報告者である小泉悠、岡田美保、長島純、齋藤大介が、それぞれロシアの軍事戦略思想、ロシアの政軍関係、宇宙・サイバー空間での作戦、作戦術から考察したウクライナ侵攻の目的や問題点について報告した。討論者である池内恵と神谷万丈からは、ロシアが苦戦している原因やウクライナ侵攻から得る日本の教訓について、報告者に質問があった。時間の制約上、フロアからの質問は割愛された。

 

【11月27日(日)】

 

部会3(27日 10:00~12:00、司会:田中誠)

「国際法から分析するロシアのウクライナ侵攻」をテーマに、3名の研究者(本吉祐樹、保井健呉、浦口薫)から、ロシアによるウクライナ侵攻と国連憲章体制、ロシアによるウクライナ国民の『移送・追放』及び第三国によるウクライナへの武器提供及び軍事情報提供の法的評価について報告が行われた。討論者(真山全)からは、軍事情報提供の評価、国連の対応が具体的制裁を伴っていないことの評価、強制移送の評価、中立法の概念、対抗措置による説明の可否、封鎖や捕獲の可否等について質疑が行われた。最後にフロアからの質疑も加わり、第三国の軍事支援が武力行使に該当する可能性等について活発な議論が行われた。

 

部会4(27日 10:00~12:00、司会兼討論:阿部亮子)

「アメリカの海洋戦略と中国の海洋進出」のテーマで開催された。相田守揮(防衛研究所)、福田潤一(笹川平和財団)、菊地茂雄(防衛研究所)から、中国のエアパワーのパワープロジェクションの発展、米国海軍の将来の戦略・作戦構想と装備、米国海兵隊の遠征前方基地作戦とスタンドイン部隊の課題について報告が行われた。阿部(同志社大学)から、中国の戦力投射の向上は軍事作戦をいかに変化させるか、日本は米国海軍にどのような支援を要請すべきか、海兵隊の戦争哲学とEABOとの整合性について質問があり、討論者の奥山真司(国際地政学研究所)から、各軍種の戦略文化はどのように浮彫りにできるかという点から討論がなされた。フロアからも質問が相次いだ。

 

共通部会2(27日 13:15、16:15 司会:竹平哲也)

「今後の日本の防衛装備開発、ロシアのウクライナ侵攻を踏まえて」をテーマに、ドローン、指揮統制ネットワーク、AI及び宇宙の各分野の技術動向について4名の報告者(部谷直亮、加藤義興、菊池裕紀、大谷康雄)から報告が行われた。装備、技術開発については、これまでも注目されてきた分野ではあったが、ウクライナ侵攻においてそれら装備等が実際にどのように活用されているか、装備や技術が期待された成果を上げているか否か、また新たな技術が導入されているか等について、パネリスト(田中宏明、中村康弘)およびフロアから質問があり、今後の防衛装備開発について活発な議論が行われた。