研究大会成果報告

第29回 令和5年度 研究大会の報告

投稿日時: 2023/10/25 jsds

日本防衛学会(JSDS)令和5年度 研究大会の報告

 

【7月1日(土)】

 

 部会1 自由論題(9:30 ~ 11:40 司会:宮本悟)

自由論題では3つの報告があった。最初の報告者である村上強一会員からは「航空自衛隊における救難部隊創設の経緯」についての報告があった。討論者である中島信吾会員からは創設における米国のかかわりについて、討論があった。2番目の報告者である相原正明会員からは「1950 年代の在日米陸軍撤退政策の検討―防衛責任の観点から」の報告があった。討論者である川名晋史会員から米国の大きな戦略からの視点について、討論があった。3番目の報告者である本名龍児会員からは「パリ講和会議における南洋諸島問題の議論」についての報告があった。討論者である相澤淳会員から南洋諸島が領土ではなく委任統治領になったことの評価について、討論があった。報告者ごとに、フロアーからも質問が多数あり、活発な議論が行われた。

 

共通部会(13:20~16:50 司会:武田康裕)

「安保関連三文書と日本防衛の課題」について、最初に中西寛会員より「安保関連三文書の意義と課題—政治と歴史の視点から」と題する基調講演が行われた。続いて、島田和久(前防衛事務次官)から「総合的な防衛力増強と防衛財源の在り方」、住田和明(元統合幕僚副長)から「統合司令部の設置をめぐる課題—統合運用と日米共同の視点」、高田克樹(元陸上総隊司令官)から「離島防衛をめぐる課題」、湯浅秀樹(前自衛隊艦隊司令官)から「総合運用体制下の優先課題」、武藤茂樹(元航空総隊司令官)から「統合防空ミサイル防衛の意義」について報告があった。パネルディスカッションでは、①専守防衛原則を堅持する一方で、スタンド・オフ防衛能力等を活用した反撃能力で抑止は可能なのか、②統合司令部の設置により、日米間の統合的運用がどこまで実現するのか、③GDP2%相当の支出水準を確保することで、抑止と統合に向けた自衛隊の役割拡大に応えることができるのか、という三つの論点を中心に討論された。最後に、フロアーから関連の質問が多数寄せられ、活発な議論が行われた。

 

 

【7月2日(日)】

 

 部会2(10:00~12:00 司会:大原一郎)

「「反撃能力」の課題」をテーマに、3名の報告者(信田智人、尾上定正、稲石敦)から、「反撃能力」政策上の課題、自衛隊の反撃能力運用に必要な“Kill Chain”と日米共同の課題、スタンド・オフ・ミサイルの実現に当たり、についてそれぞれ報告が行われた。討論者(髙井晉)から、信田報告に対して、反撃の国際法上の解釈について、尾上報告に対して、反撃の実効の可能性や日米共同の可能性について、稲石報告に対して、現在計画されているスケジュールの実現可能性などについてそれぞれ質問があり、それに対して報告者からの応答があった。最後にフロアーも加わり活発な議論が行われた。

 

部会3(13:00~15:00 司会兼討論:外園博一)

「日本の防衛体制の強化に資する技術開発上の課題」をテーマに、3名の報告者(寺田大介、渡辺辰悟、濱野健二)から、魚型UUVに関する研究動向、電磁波領域利用の現状と課題、指揮統制へのAI適用研究についてそれぞれ報告が行われた。討論者(山本雅司)から、寺田報告に対して、生物模倣技術の発展の方向性やエネルギーやペイロード確保の可能性等について、渡辺報告に対して、自律分散的な戦い方を実現する上での電磁波領域における課題と解決の可能性やその優位確保の手段について、濱野報告に対して、運用者がAIを活用する際の技術観点からの注意点や「説明能力」等の技術的課題と解決の可能性について、また「領域横断」の観点から、3名の報告者に対して組織間の連携、技術の民生分野への波及、領域横断作戦への当該技術の寄与の可能性に係る質問があった。最後にフロアーも加わり活発な議論が行われた。

 

部会4(15:15~17:15 司会兼討論:川上高司)

「日米防衛協力: 日米防衛の認識のギャップ」のテーマで開催された。門間理良(拓殖大学)、磯部晃一(元東部方面総監)、川上高司(拓殖大学)からそれぞれ、「中国の軍事演習の意味と台湾の対応」、「島嶼防衛では米国海兵隊に何を期待するのか?」「拡大抑止の運用をめぐる日米のギャップ」について報告が行われた。司会兼討論者の細谷雄一(慶應義塾大学)からは、門間報告に対して、台湾本島への侵攻における政治的トリガー(習近平体制による統治の正統性確保)と軍事的トリガー(中国の軍拡が進んで容易というミスパーセプションの生起)、いずれの可能性が高いと考えるか、川上報告に対して、日本が核シェアを政策として検討する際のメリットとデメリットとは何か、磯部報告に対して、グレーゾーン事態を抑止するためにいかなる対処方法が考えられるか、という問題提起がなされた。フロアーからも関連の質問が相次ぎ、活発な議論が行われた。